自動車用の鉛バッテリーの役割・構造・化学反応の基礎知識
- カテゴリー
- 自動車の悩み
- ジャンル
- バッテリーのメンテナンス
- 目的(解決できる悩み)
- 自動車用の鉛バッテリーの役割、電極と電解液の化学反応の仕組みが理解できるようになること
- 目次
- 1.車の鉛バッテリーの基礎知識
- カーバッテリーの役割
- カーバッテリーの構造と化学反応の仕組み
- カーバッテリーの電圧は何ボルト?
1.車の鉛バッテリーの基礎知識
ガソリン車、ディーゼル車、ハイブッリドカーのどんな自動車でもバッテリーが搭載されていることが普通ですよね。
バッテリーは電気を蓄えたり取り出したりするものですが、その仕組みは知らないということが現実なので、この機会に自動車用の鉛バッテリーの役割と化学反応の仕組みを身に着けてみませんか。
カーバッテリーの役割
自動車には、自動車用の鉛蓄電池(なまりちくでんち)というバッテリーがエンジンルームに備え付けられていることは車の免許証を持っている人からしたら常識ですよね。
バッテリーとは何かというと電気を蓄えたり放出したりする為の充電池(二次電池)のことです。
では、なぜ自動車にバッテリーが搭載されているのか知っていますか?
自動車にはオルタネーターという交流発電機が備え付けられているのでエンジンが掛かっている時は発電した交流の電気を整流回路で直流に変えて車の電装品へ供給することができますが、エンジンを始動する時はオルタネーターは停止しているので電気が蓄えられている何かしらの装置からスターターモーターへ電気を供給して回転させなければエンジンは掛からないからです。
つまり、短時間に大電流を流してエンジンを始動させるのに鉛バッテリーは適しているということです。
また、エンジンが掛かっていない時は電装品にバッテリーから電気を供給しなければいけませんし、エンジンの回転数が低回転で走行している時に多くの電装品を使っている状況ではオルタネーターで発電した電気だけでは電装品に供給する電気が不足するので不足した分はバッテリーから電気を供給しなければいけなくなるからという理由もあります。
したがって、車に搭載されているバッテリーの主な役割は、
カーバッテリーの役割
- エンジンを始動する時にスターターモーターを回転させる
- オルタネーターで発電した電気を蓄える
- 電装品の動作時にオルタネーターの発電量で不足した電気を補う
- エンジン停止時は電装品のバックアップ電源として使う
という電気の充電・放電をさせることです。
バッテリーに蓄えられている充電残量が減ると充電する、エンジンが掛かっていない時やオルタネーターで発電した電気では足りない時はバッテリーを放電して対処するといったように充電と放電を繰り返しています。
カーバッテリーの構造と化学反応の仕組み
鉛バッテリーの外観は、ケースの上側にプラスターミナル(プラス端子)、マイナスターミナル(マイナス端子)、インジケーター、バッテリー液の補充口(キャップ)があり、ケースの横側に液面のUPPERレベル、液面のLOWERレベルの表示があります。
カーバッテリーの各部の説明
- プラスターミナル:ケーブルのプラス端子を接続する箇所です。
- マイナスターミナル:ケーブルのマイナス端子を接続する箇所です。
- インジケーター:バッテリーの充電残量と比重の確認窓のことです。
- バッテリー液の補充口:バッテリー液を補充する所です。
- 液面のUPPERレベル:バッテリー液の上限のことです。この線よりもバッテリー液を多く入れたらいけません。
- 液面のLOWERレベル:バッテリー液の下限のことです。この線よりもバッテリー液が少なくなったらいけません。
鉛バッテリーの内部は、ケースの中にプラス極板(陽極板)、マイナス極板(陰極板)という物質(金属)と電解液という溶液が入っています。
自動車用の鉛バッテリーの構成物質
- プラス極板:二酸化鉛板(PbO2)
- マイナス極板:鉛板(Pb)
- 電解液:希硫酸(H2SO4)
鉛バッテリーの内部の構造は、プラス極板とマイナス極板がセパレーターを介して交互に配置されていて、そこにそれぞれの極板が満たされる状態となるように電解液が注入されています。
鉛バッテリーが充放電する仕組みは、希硫酸という電解液中に異なる性質を持った二酸化鉛板(プラス極板)と鉛板(マイナス極板)という物質を入れると、化学反応によってそれぞれの物質の間に電位差が発生する原理を利用してバッテリーに電気を貯めたり取り出したりします。
プラス極板、マイナス極板、電解液の化学反応を簡単に説明すると次の通りです。
- プラス極板の化学反応
- バッテリーが放電すると二酸化鉛の極板(PbO2)に硫酸鉛(PbSO4)が付着、充電すると硫酸鉛(PbSO4)が溶解して二酸化鉛の極板(PbO2)に戻る
- マイナス極板の化学反応
- バッテリーが放電すると鉛の極板(Pb)に硫酸鉛(PbSO4)が付着、充電すると硫酸鉛(PbSO4)が溶解して鉛の極板(Pb)に戻る
- 電解液の化学反応
- バッテリーが放電すると希硫酸が水(硫酸濃度が低下する)に変化、充電すると水が希硫酸(硫酸濃度が上昇)に戻る
このように、バッテリーの電解液である希硫酸がそれぞれの電極と電解液の間で化学反応することでバッテリー内に電気を充電したり放電したりしています。
以上の仕組みを見ると、鉛バッテリーは永久に充放電を繰り返すことができそうに思えますが、現実は放電時にサルフェーションという結晶性の硫酸鉛が形成され電極の劣化により徐々に充電が困難になってくるので数年使うと寿命を迎えます。
カーバッテリーの電圧は何ボルト?
自動車用の鉛バッテリーの電圧は1個当たりDC12Vということは車に乗っている人なら誰でも知っていますよね。
では、どういう仕組みで12Vになっているのかご存じでしょうか。
バッテリーのセル1つ(1室の電槽)当たりの電圧はDC2.1Vで、1つのバッテリーのパッケージは6セル(6室の電槽)が直列に接続されてDC12.6V(公称電圧DC12V)となっています。
DC12Vというのは公称電圧(目安の電圧)のことで、セルの電圧から求めると電圧はDC12.6Vになります。実際に電圧計で端子間の電圧を測定するとDC12.6Vあることがわかります。
バッテリー液の補充口が6つある理由は、DC2.1Vのバッテリーのセルが6つ配置・接続されて6室の電槽で1個の12Vバッテリーとなるように構成されているからです。
新品のバッテリーは13V前後あり放電すると電圧は低くなりますが充電すると元の電圧に戻り、また、状態が良いバッテリーも12.6~13.0Vくらいを指し示します。
バッテリーが劣化してくると充電しても12.0~12.5Vくらいまでしか電圧は上がらなくなりますが、電圧値だけでバッテリーの正確な寿命は判断できません。
なぜなら、鉛バッテリーは電解液に希硫酸を使っているので比重計で比重を調べることが普通ですし、バッテリーの正確な寿命が知りたい時は、CCA(コールドクランキングアンペア)と電極板の内部抵抗値が必要になるからです。
(記事作成日:2018年1月18日、最終更新日:2021年6月29日)