医療保険の基礎知識
医療保険って何ですか?
医療保険とは、保険に加入している本人が病気やけがを起こした時に病院で入院したり手術したりする場合に備える為の保険です。
医療保険は、テレビのコマーシャルでよく見かけるようになり身近なものとなりましたね。
保険にも様々な種類があり、生命保険は被保険者(保険の保障の対象となる者)が死亡した時に受取人が保険金を受け取ることができますが、医療保険は被保険者が死亡した時に保険金を受け取るのではなく、病気や不慮の事故により病院で入院したり手術したりといったトラブルが起きた時に給付金が支払われ受け取ることができます。
病院で入院したり手術をする時といえば病気やけがに見舞われた時ですが、病気やけがとは縁がない体が丈夫な人が普通に日常生活を送っていても、病院で入院する確率はゼロではありません。
もし、病院に入院することになればいくらかのまとまったお金が必要となりますし、入院中に手術をすることになるとさらに治療費がかさんできます。
医療保険に加入する時は、かさむ医療費の負担をどれだけカバーできるかを考えて、入院日額(1日当たりに支払われる入院時の給付金)を決めてください。
一般的には、5000円又は10000円のどちらかの入院日額しか選べない医療保険が多いです。
その他には、通院時も保障するか、三大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)を保障するかの特約を医療保険につけることもできます。
1日当たりに必要な入院費用はどのくらい?
病院へ入院や手術をお願いすることになると入院すれば入院費、手術すれば手術費を病院へ支払わなければいけなくなるので治療費はタダではありません。
では、1日当たりどのくらいの入院費用を用意しなければいけないのかというと、
- 差額ベッド代
- 個室:約7500円
2人部屋:約3000円
3人部屋:約2800円
4人部屋:約2300円
大部屋:自己負担なし - 6人部屋などの大部屋以外で入院する時は1日ごとに差額ベッド代が必要です。
※差額ベッド代は公的医療保険の対象外なので全額自己負担です。 - 食事代
- 2017年の自己負担額は1食360円です。2018年からは1食460円となります。
- 薬代
- 薬を処方された時の費用。
- 手術代
- 手術をした時の費用。
※高度先進医療で治療する場合は公的医療保険の対象外なので全額自己負担です。 - 雑費
- 衣料品や日用品などの費用。
などを足し合わせた費用が必要になります。
例えば、4人部屋で手術なしで入院することになると、食事代や薬代などを含めるとトータルで1日5000円くらいは必要になることが予想できます。
医療費は、健康保険や国民健康保険の公的医療保険に加入していれば国が7割負担してくれるので、実際に支払う自己負担額は70歳未満は医療費の総額の3割です。70歳以上75歳未満は2割、75歳以上は1割です。
※70歳以上でも一定の所得がある場合は3割負担となります。
なお、ひと月に医療機関等に支払った自己負担の総額がある一定の金額を超えると超えた分は健康保険や国民健康保険の窓口へ申請すると高額療養費として後日戻ってきます。
※差額ベッド代、食事代、高度先進医療の治療は高額療養制度の対象外です。
医療保険の給付金はいくら支払われる?
もし、病院で入院することになったら大部屋以外の部屋に入る方は差額ベッド代などの入院費用を準備しなければいけません。
少しでも入院費用や手術費用の負担を軽くしたいという時に頼りになる保険が医療保険です。
医療保険に加入していれば、車とぶつかってけがをしたので、その治療の為に病院で2週間入院することとなった場合は、次で計算するように1日当たりに保障される入院費用の契約額が入院した日数分支払われます。
例えば、入院日額が10000円の医療保険に加入していれば、支払われる入院給付金は入院日額×入院日数なので10000円×14日=140000円となり、入院給付金の支払い額は140000円と計算できます。
また、保険会社が支払いの対象としている手術を行えば契約した入院日額に手術の給付倍率を掛け合わせた手術給付金が支払われます。
※手術する部位の違いによって、10倍、20倍、40倍といった給付倍率があらかじめ決められています。
例えば、入院日額が10000円の保険で給付倍率が10倍の手術を行えば、10000円×10倍=10万円が手術1回につき手術給付金として支払われます。
その他に、先進医療特約に加入していれば、先進医療を使って治療した時に給付金が支払われます。先進医療は治療費が高いので、給付金は先払いか後払いか確認しておきましょう。
このように、医療保険に加入していれば、入院給付金と手術給付金が支払われます。
但し、医療保険は、病気やけがを治療する目的の入院や手術が保障の対象となるので、検査する為の入院や美容整形は対象外です。
人はいつ死亡するのかわからないと同じように、人はいつ病気やけがが起こるのかわからないので不測の事態に備えて医療保険に加入して対処しましょう。
医療保険の保険料
保険料は加入時の年齢に応じて変化する
医療保険の保険料は、契約時の年齢、入院給付金日額、保険料を払い込む期間などにより大きく異なってきます。
例えば、
- 入院給付金日額:10000円
- 入院給付金支払限度:60日
- 保険期間・保険料払込期間:終身
- 通院時の保障:なし
- 三大疾病保険料払込免除特約:なし
のプランの医療保険に加入した時の年齢に応じた月額の保険料は、
- 20歳男性:約2500円
- 30歳男性:約3000円
- 40歳男性:約4000円
- 50歳男性:約6000円
- 60歳男性:約9000円
となります。
保険会社へ支払う保険料の総額の計算方法は、月々の保険料×12カ月×支払い年数で簡単に計算できます。
例えば、30歳男性が毎月3000円の保険料を70歳になるまで40年間支払った時は、3000円×480カ月=144万円になります。
40歳男性が毎月4000円の保険料を70歳になるまで30年間支払った時は、4000円×360カ月=144万円になります。
このように、保険料の払い込み期間が終身払いの医療保険は、加入時の年齢が高くなるほど保険料は高くなり、保険料の支払いの総額は70歳くらいを境として加入時の年齢が高い方が多く支払わないといけなくなる傾向があります。
終身医療保険の保障は一生涯続きますが、保険料は一生涯払い続けるタイプの終身医療保険の他には、60歳や65歳で払い込みを完了するタイプの終身医療保険もあります。
どちらのタイプの医療保険の方が支払う保険料の総額が少なくなるのかというと、60歳などの年齢に達したら払い込みを完了するタイプの医療保険です。
また、終身医療保険の他には、保障期間に有効期限がある定期型の医療保険もあります。定期型は掛け捨ての保険なので保険料は安いですが、満期を迎えるまでに入院・手術をしなければ給付金を受け取ることはできないのでよく考えてから加入してください。
※満期後に保障は消滅するので、保障を続けるには更新が必要になります。
医療保険は、途中で解約しても基本的に解約返戻金はありません。医療保険は入院や手術に必要となる高額な費用を準備する為に加入する保険だと考えてください。
終身医療保険と定期医療保険はどちらが保険料はお得?
医療保険には、終身医療保険と定期医療保険の2種類があります。
終身医療保険は一生涯保障されますが、定期医療保険は満期を迎えるまでが保障期間となります。
定期医療保険は加入時の年齢が低いと保険料は安いですが、保険を継続させるには更新という作業が必要になり、更新時の年齢が高くなるほど保険料は高くなっていく性質があるので、一生涯の医療保障を得たいのなら定期医療保険を10年ごとに更新していくよりも終身医療保険に加入した方が保険料の総支払い額は少なくできるのでお得です。
また、単独で医療保険に加入せずに夫の終身保険に医療特約として妻と子に保障を付けているという家庭は、夫が死亡したら医療特約の保障はなくなってしまいますし、もし、離婚したら特約の更新を止める可能性があります。
基本的には終身保険の医療特約は80歳まで付加することはできますが、何年かに1度更新作業が必要になります。更新していくごとに医療特約の保険料は上がっていくので、一生涯医療保障を続けたい時は若いうちに払い込み期間があらかじめ決まっている終身医療保険に単独で加入した方が払い込む保険料の総額は安くなります。
ですので、医療保険は1人ごとに加入するものと考えてください。病気になって入院したら老後不安だと考えている方は終身医療保険に加入して備えましょう。
なお、定期医療保険は満期を迎えても満期保険金はありません。また、終身医療保険は一生涯保障されるので満期保険金はないことを覚えておきましょう。
医療保険の保障に関する注意事項
入院時の注意事項
医療保険に加入していれば入院した時に給付金が支払われるといわれますが、給付金を受け取ることができる入院とは次のような入院のことです。
- 病気を治療する為の入院
- 交通事故や自分でつまずいて転んだなどで生じたけがを治療する為の入院
上記のような入院が給付金の支払いの対象となります。
※人間ドックなどを受診する為に宿泊を伴い検査入院する場合は、保障の対象外となります。
入院日数の限度の注意事項
1回の入院で給付対象となる日数に限度がある医療保険が多いので注意してください。
※1入院で60日や120日までを保障の対象としている保険が一般的です。
例えば、給付金の支払い限度日数が60日の医療保険に加入していれば、60日までの入院は保障してくれますが、61日目からは入院していても保障してもらえません。
通算入院日数の注意事項
入院日数をカウントして通算入院日数に制限をしている医療保険があります。
すべての入院に対して入院給付金の支払いの対象となるわけではありません。次回入院する時は前回の入院から半年くらいの期間を空けないと支払いの対象とならない保険が多くあります。
がん保険の注意事項
医療保険には、がんでの死亡や治療に的を絞ったがん専用の保険があります。
がんの治療は長期に及ぶので、普通の医療保険だけでは保障が不足することがほとんどです。そんな時に頼りになる保険ががん保険です。
がん保険とは、医師にがんと診断されると保険会社から診断給付金が支給される保険のことで、診断給付金は、1回のみで終了してしまうタイプと、再発した場合も支給されるタイプがあります。
また、がんによる入院、手術、通院時には給付金が、がんによる死亡時には死亡保険金が支払われます。
がん保険には免責期間(保険の保障の対象とならない期間)があり、契約してから90日間にがんと診断されても診断給付金を受け取ることはできません。
保障期間は、5年、10年といった有効期限があるタイプと一生涯保障されるタイプがあるのでよく考えて加入してください。
おすすめの医療保険とは
医療保険への加入は終身型がおすすめ
医療保険の種類には終身医療保険と定期医療保険がありますが、私がおすすめする医療保険は、一生涯医療保障が得られる終身医療保険です。できれば、60歳くらいで保険料の払い込みが完了するタイプが望ましいと思います。
定期医療保険は、保険料は安くて経済的だと思われますが、満期を迎えるまでに入院や手術をしなければ給付金は支払われず掛け捨てになるので気を付けてください。
自営業をしている方は、けがで仕事ができなくなって休業すると給与が保障されないので所得保障として加入するのも1つの方法ですし、日本には高額療養制度があるので、医療保険に加入せずにその保険料をいざという時に備えて別枠として銀行へ貯金して、入院や手術をする時がきたら引き出して使うという使い方も賢い1つの方法です。
※ある金額を超えて支払った医療費は申請すれば後日戻ってきます。なお、差額ベッド代、食事代、先進医療費は高額療養制度の対象外です。
保険という商品は、保険会社へ支払った保険料の総額よりも多くの金額を受け取らないと元が取れないので、月々の保険料と払い込む期間から計算して算出した保険料の総額よりも入院や手術をして給付金を受け取る確率の方が高ければ加入することがおすすめです。
医療保険に加入する時は、次のことをよく考えてから加入するようにしましょう。
- 入院給付金日額
入院した時はいくら給付金が支払われるのか - 保険料を払い込む期間
何歳まで保険料を払い続けるのか - 入院限度日数の制限
1回の入院で何日間まで保障の対象となるのか - 通算入院日数
前回入院から次回の入院まではどのくらいの期間を空けないと保障されないのか
また、医療保険に加入せずにその保険料分を別に貯金しておいて入院することがあれば引き出して使うようにすれば事足りることもあることを覚えておいてください。
なお、病気やけがで病院で入院や手術をしても保険会社へ請求をしなければ給付金は支払われません。
※入院給付金、手術給付金は受け取っても見舞金扱いなので課税されません。
(記事作成日:2017年2月26日、最終更新日:2017年5月13日)