野菜栽培で使う有機質肥料の基礎知識
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- 目的(解決できる悩み)
- プランター栽培で使う有機質肥料の種類と特徴が理解できるようになること
- 目次
- 1.有機質肥料の基礎知識
- 有機質肥料って何ですか?
- 発酵させた有機質肥料と乾燥させただけの有機質肥料の違い
- 2.有機質肥料の種類と特徴
- 動物の有機物から作った有機質肥料の種類と特徴
- 植物の有機物から作った有機質肥料の種類と特徴
1.有機質肥料の基礎知識
有機質肥料とは原料が植物や動物の有機質で作られた緩効性や遅効性の肥料のことです。
有機質肥料は土壌微生物に分解されてから肥料効果が初めて現れます。
有機質肥料を施肥してから肥料が効き始めるまでの日数が化学肥料とは明らかに異なりますので特徴を良く理解してから使ってください。
有機質肥料って何ですか?
野菜が大きく育つには養分となる肥料が必ず必要になります。
肥料を原料の違いで分けると次のように有機質肥料と化学肥料(無機質肥料)の2種類に分けることができます。
肥料の種類
- 有機質肥料:動物や植物などの有機物を原料とした肥料のこと
- 化学肥料:空気中の窒素、リン・カリ鉱物などから化学的に合成して作った肥料のこと
このように、肥料は原料の違いにより区別されています。
有機質肥料とは有機物を原料とした肥料のことで、肥料となる主な有機物には、鶏ふん、牛ふん、骨粉、魚かす、ボカシ肥といった動物性のものと、油かすといった植物性のものがあります。
植物性の有機物で、バーク、落ち葉などがありますが、肥料効果を期待して使うものではなく、土壌の通気性、排水性、保水性の改善に使うものです。
では、有機質肥料を使う目的は何かというと美味しい野菜を収穫する為です。有機質肥料を使うとアミノ酸が野菜の甘みを上げて美味しい野菜を作ることができます。
有機質肥料の特徴としては、土壌微生物に有機物が分解され無機物となり水に溶けて初めて野菜の根から吸収できる形としての養分となるので、肥料効果が現れるまでに時間がかかることです。
また、軟らかい有機物よりも硬い有機物の方が微生物に分解されるまでの時間は長くなります。
有機質肥料の効果は、緩効性や遅効性の特徴がありますので、有機質肥料を元肥として使う場合は苗を植え付ける2週間前に土の中に施し、追肥として使う場合は有機質肥料と化学肥料を混ぜ合わせて使う方法がおすすめです。
発酵させた有機質肥料と乾燥させただけの有機質肥料の違い
有機質肥料は、次のように発酵させた肥料と発酵させずに乾燥させただけの肥料があるので取り扱いに注意してください。
- 発酵させた有機質肥料
- 発酵させた有機質肥料とは、微生物によりある程度分解させた肥料のことで、肥料効果がゆっくりじわじわ効いて根に障害が出にくいです。
- 乾燥させただけの有機質肥料
- 乾燥させただけの有機質肥料は、これから微生物に発酵・分解してもらわないといけないので、害虫が寄ってくる、アンモニアガスが発生する、土の中が酸素不足になるなどが起き根に障害が出やすいです。
では、分解しやすい有機物か分解しにくい有機物かを知りたい時はどうすればいいのかというと炭素率(C/N比)を見ればわかります。
炭素率とは、有機物に含まれている炭素と窒素の割合(有機物に含まれる炭素の量を窒素の量で割って計算した値)のことを表しています。
炭素率と有機物の関係
- 炭素率が高い場合:炭素が多く窒素が少ない有機物のことで微生物が分解しにくい物質です。
※木の枝や落ち葉などの植物の木質(リグニン)や繊維(セルロース)のもの - 炭素率が低い場合:炭素が少なく窒素が多い有機物のことで微生物が分解しやすい物質です。
※動物のふん、米ぬか、油かす、料理した時に出る生ごみなど
このように、炭素が多い有機物は分解しにくく、窒素が多い有機物は分解しやすいという特徴があります。
炭素率は自分で堆肥を作る時の目安としても使えます。炭素率が高いものから低いものまでいろいろな有機物を組み合わせて炭素率を30くらいに調整すると嫌な臭いもでず堆肥作りは成功しやすいです。
※微生物の活動は温度が影響するので、冬の寒い季節は有機物の分解はされにくくなります。
有機質肥料は、有機物を発酵させ熟成させると肥料として効果が現れるものと覚えると同時に、土に混ぜる際はそれぞれの有機質肥料の特徴を十分理解しておいてください。
2.有機質肥料の種類と特徴
有機質肥料には、鶏ふんなどのように動物から作ったものと、油かすのように植物から作ったものの2種類があります。
動物の有機物から作っても植物の有機物から作ってもどちらでも有機質肥料ですが、それぞれの肥料によって含まれている肥料成分が異なりますので、有機質肥料を購入する際はパッケージに書かれている肥料の成分表を見てから判断してください。
動物の有機物から作った有機質肥料の種類と特徴
動物性の有機質肥料には、鶏ふん、牛ふん、骨粉、魚かす、ボカシ肥などがあります。
それぞれの有機物で肥料成分の含有量と微生物による分解の早さが異なるので注意して使ってください。
- 鶏ふん(けいふん)の特徴
- 鶏ふんとは、ニワトリの排泄物を原料とした肥料のことです。
- 窒素約3%、リン酸約5%、カリ約3%を多く含んでいて価格が安いので家庭菜園でよく使われています。
- 軟らかい有機物なので微生物による分解がしやすく、有機質肥料の中では肥料効果が現れるのは早い方です。
- 牛ふん(ぎゅうふん)の特徴
- 牛ふんとは、牛の排泄物を原料とした肥料のことです。
- 窒素約2%、リン酸約1%、カリ約1%を含んでいますが、鶏ふんよりも肥料成分は少ないです。
- 牛ふんには繊維質が多く含まれているので土壌改良にも使えます。
- 骨粉(こっぷん)の特徴
- 骨粉とは、豚や牛などの動物の骨を蒸してから乾燥させ粉々に砕いた肥料のことです。
- 窒素約1%、リン酸約18%、カリ約1%を含んでおり、特にリン酸の肥料成分が多いのが特徴です。
- 骨は組織が硬いので微生物による分解に時間がかかります。
- 魚かす(ぎょかす)の特徴
- 魚かすとは、イワシなどの魚から油分を取り除き乾燥させて細かく砕いた肥料のことです。
- 窒素約6%、リン酸約6%を含んでいるので肥料成分のバランスがよく、また、魚にはアミノ酸が豊富に含まれているので、魚かすを使うと美味しい野菜を育てることができます。
- 微生物による分解がしやすいので他の有機質肥料よりも肥料効果が早く現れます。
- ボカシ肥の特徴
- ボカシ肥とは、魚かす、骨粉、油かすなどの有機物を混ぜ合わせてある程度発酵させた肥料のことです。
- 肥料成分は混ざっている材料によって異なりますが、発酵させてあるので肥料の効き目は他の有機質肥料よりも早く穏やかに効きます。
動物性の有機質肥料の特徴は、肉質(タンパク質)には窒素、骨にはリン酸が多く含まれています。
植物の有機物から作った有機質肥料の種類と特徴
植物性の有機質肥料の種類としては油かすがとても有名です。
- 油かすの特徴
- 油かすとは、ナタネなどの植物の種をしぼって油を抽出した時にでたしぼりかすを原料とした肥料のことです。
- 窒素約5%、リン酸約2%、カリ約1%を含んでおり、特に窒素成分が多いのが特徴です。
- ほとんどの油かすは乾燥させただけです。発酵していて肥料効果が早く現れる油かすもあります。
- 草木灰(そうもくばい)の特徴
- 草木灰とは、草木を燃やした時にできた灰のことです。
- リン酸約1%、カリ約5%というように、窒素は含んでおらずリン酸とカリ成分だけを含んだ肥料ですが、カリの方が多く含まれています。
- また、石灰分(アルカリ成分)も含んでいるので酸性土壌のpHを中和する効果もあります。
植物性の有機質肥料の特徴は、タネ(タンパク質)には窒素が多く含まれています。
植物の有機物は油かすの他には、バーク堆肥や腐葉土などがありますが肥料成分はほとんど含まれていません。
バーク堆肥や腐葉土は肥料効果を期待するのではなく土をふかふかにするなどの土の環境を改善する土壌改良を目的として使います。
化学肥料は無機成分なので水に溶けるとすぐに養分が根から吸収されますが、有機質肥料は微生物に分解された後に水に溶けないと根から吸収されません。
有機質肥料は遅効性のものが多く、肥料効果が現れるまでに早くても2週間くらいかかるので、取り扱う時は注意してください。
野菜栽培で使うおすすめの有機質肥料
商品名:自然応用科学 おいしい野菜の肥料 2kg
自然応用科学のおいしい野菜の肥料は、有機原料のみで作られたペレットタイプの野菜と果樹専用のぼかし肥料です。肥料成分はN:P:K=6:5:3で、アミノ酸が含まれているので野菜の味が向上します。
また、ぼかし肥料はある程度発酵させてあるので普通の有機質肥料よりも効き目は早く現れます。
有機質肥料の独特のにおいはほとんどなく扱いやすいので、化学肥料を使わず有機質肥料のみで野菜栽培したい方におすすめです。
(記事作成日:2017年11月15日、最終更新日:2023年4月28日)