個人型確定拠出年金(イデコ)を使って税金の優遇を受けながら老後の資産運用を始める方法

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確定拠出年金の基礎知識

私たちが強制加入している公的年金制度のおさらい

年金手帳

普段何気なく年金の掛け金を国に納めていると思いますが、ここで、みなさんが加入している公的年金制度について簡単におさらいしてみましょう。

公的年金には、自営業の方などが加入する国民年金と会社員の方が加入する厚生年金があります。
※国民年金は年金制度のベースとなる役割をしていて基礎年金と呼ばれています。

公的年金の仕組みを理解しやすくする為に1階部分の年金と2階部分の年金に分けて説明すると、

  • 1階部分の年金:国民年金を納めて、将来老齢基礎年金を受け取る年金のこと
  • 2階部分の年金:厚生年金を納めて、将来老齢厚生年金を受け取る年金のこと
    ※厚生年金は2階部分の年金ですがベースとなる国民年金も一緒に納めています。

という意味合いになります。

一般的には、1階部分の年金のみか、1階部分と2階部分を足し合わせた年金が将来受給できる年金として計算されます。

受給できる年金の金額の目安としては、

  • 1階部分の国民年金だけしか納めていない方は1カ月当たりの受給額は約5万円
  • 2階部分の厚生年金を納めている方は1カ月当たりの受給額は約15万円

となります。

国民年金と厚生年金で受給額に差はありますが、将来の生活資金として年金をあてにしていても受給額はあまり多くないので公的年金だけでは老後不安ですよね。

そこで、1階部分と2階部分の年金受給額では生活ができなく将来不安という方は3階部分の年金(個人型確定拠出年金)に加入することができます。
※3階部分の年金には、厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金などがあります。(確定給付企業年金とは、掛け金に応じて給付額があらかじめ決まっている年金のことです。)

この個人型確定拠出年金に加入すると、1階部分の年金+2階部分の年金+3階部分の年金を将来受給することができるようになるので、老後の生活資金不足の不安を少しでもなくなります。
※1階部分と2階部分の年金受給額で満足できる方は個人型確定拠出年金に加入する必要はありません。

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最近注目され始めた確定拠出年金とは

みなさんは、確定拠出年金(かくていきょしゅつねんきん)という言葉を聞いたことはありますか?

厚生年金や国民年金は知っているけど確定拠出年金は知らないという方は多いと思いますが、言葉の通り確定拠出年金とは老後の生活費を支える年金の1つです。
※確定拠出年金は2001年に導入された年金制度ですが知名度が低い為に世間にはあまり知れ渡っていません。確定拠出年金は、英語の頭文字をとってDC(Defined Contribution Plan)や401k(アメリカの法律401条からとって)という呼び方も使われています。

このように知名度が低い確定拠出年金ですが、2017年に加入できる対象者が拡大されたことによって注目が高くなっています。

そもそも確定拠出年金とは何かというと、専用の口座を作り掛け金を拠出して加入者が定期預金や投資信託で運用して60歳になるまで積み立てていく年金のことです。自分自身で投資先を決めて運用して60歳を越えると、掛け金+運用益を年金として受け取ることができ、また、税金の優遇もしてくれるというありがたい制度です。

なお、確定拠出年金は、60歳以降に受け取れる老齢給付金の他に、障害給付金(加入者が障害になった時に受け取れる給付金)、死亡一時金(加入者が途中で死亡した時に遺族が受け取れる給付金)として状況に応じて受け取り方法が変わります。

確定拠出年金の種類と掛け金の上限額

確定拠出年金には、企業型と個人型の2種類があります。
※企業型確定拠出年金は企業型DC、個人型確定拠出年金は個人型DC又はiDeCo(イデコ)と呼ばれています。

企業型確定拠出年金
企業型確定拠出年金を実施している会社に勤めていれば加入できます。
※原則的に厚生年金に加入している20~60歳未満の方は会社で手続きをして全員加入し、会社が掛け金を拠出して加入者が運用します。
個人型確定拠出年金
勤め先の会社に企業型確定拠出年金がない場合、又は確定給付年金・厚生年金基金がない場合は個人型確定拠出年金に任意で加入できます。
※自分で掛け金を拠出して自分で運用します。

企業型確定拠出年金で拠出できる掛け金の上限額は、

  • 企業型確定拠出年金の他に年金制度がない場合:月々55000円、年間66万円
  • 企業型確定拠出年金の他に年金制度がある場合:月々27500円、年間33万円

となります。

2016年までの個人型確定拠出年金で拠出できる掛け金の上限額は、

  • 20歳以上60歳未満の国民年金の第1号被保険者(自営業者やフリーターなど):月々68000円、年間81万6千円
    ※上限額は国民年金基金と合わせた金額です。
  • 60歳未満の第2号被保険者(企業型確定拠出年金や確定給付年金・厚生年金基金のないサラリーマンなど):月々23000円、年間27万6千円

という内容でしたが、2017年からは制度の内容が大幅に改正され、

  • 第2号被保険者(公務員):月々12000円、年間14万4千円
  • 第3号被保険者(専業主婦など):月々23000円、年間27万6千円

が今までの制度に新たに加わり、さらに、第2号被保険者で会社が企業型確定拠出年金、確定給付年金、厚生年金基金を実施していても個人型確定拠出年金に加入できるようになりました。
※企業型確定拠出年金のみに加入している方は月々20000円、その他の方は月々12000円。

このように、個人型確定拠出年金は制度が改正されたことによりほとんどの方が加入対象となったので、老後の生活資金と節税の為に個人型確定拠出年金に契約してみようかなと考える方が増え始めています。

個人型確定拠出年金のメリットとデメリット

個人型確定拠出年金のメリット

お金が増える

個人型確定拠出年金で老後の資金を運用するメリットとしては次のように、

  • 掛け金は毎年所得控除できる
  • 運用中の収益には税金は課せられない
  • 年金の受取時に退職所得控除、公的年金等控除ができる

という3つの税金の優遇があることが挙げられます。

もう少し詳しく説明すると、

1つ目は、掛け金は全額所得控除となり、所得税と住民税の節税ができます。
※企業型確定拠出年金は対象外です(マッチング拠出分は対象)。

2つ目は、運用中の利益には税金がかからないことです。
※企業型確定拠出年金も対象です。

普通の証券会社の口座から株式や投資信託へ投資をして利益を得たら、その利益分に20.315%(内訳は、所得税15.315%、住民税5%)が課税されるので、確定拠出年金を利用して非課税で投資した方がお得です。
※銀行口座の定期預金でも税金は課せられますよね。

3つ目は、年金の受け取り時に税の控除が受けられることです。
※企業型確定拠出年金も対象です。

年金として受け取る場合は公的年金控除、一時金で受け取る場合は退職所得控除の対象となります。

個人型確定拠出年金は、60歳まで積み立てをして60歳以降に受給をするので、例えば、個人型確定拠出年金を22歳から始めれば60歳になるまでに38年間運用できます。

1カ月当たりの掛け金を1万円で運用すると38年間で456万円の積み立てになり、年率がゼロ%なら456万円のままですが、仮に年率1%で運用できたとすると554万円に増えます。
※個人型確定拠出年金は、掛け金は全額所得控除できるので節税になり、運用益は非課税なので税金はかかりません。掛け金が多く、年率が高く、運用期間を長くすれば老後の資金が効率よく増やせます。

このように、個人型確定拠出年金のメリットは掛け金は全額所得控除になること、運用中の収益には一切税金が課税されないこと、受け取り時にも税金の優遇が受けられることです。

個人型確定拠出年金のデメリット

お金が減る

個人型確定拠出年金のデメリットは、60歳以降にならないと積立金の受け取りができないことです。

独身の方では車の購入、結婚して家庭を持っている方では子供の養育費やマイホーム購入などの資金のことも考えて余裕を持って月々の掛け金を決めてください。

また、運用する金融商品には価格が変動するものがあるので、リスク管理を怠ると元本割れする恐れがでてきます。

個人型確定拠出年金に加入すれば税金の優遇を受けることができますが、本来の目的は60歳になるまで運用して年金額を少しでも増やすことです。

ですので、自分で月々の掛け金と投資する金融商品を決めて運用しなければいけません。元本割れしてもすべて自己責任となりますので投資する金融商品について勉強が必要になります。

保険会社の個人年金保険は受け取る額は加入した時の掛け金で決まりますが、個人型確定拠出年金は将来受け取る額は運用成績によって変動するので無理な投資はしないようにしましょう。

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個人型確定拠出年金への加入から受け取りまでの流れ

個人型確定拠出年金の加入方法

商品の契約

個人型確定拠出年金に加入できる方は、20歳以上60歳未満で国民年金に加入している人、厚生年金に加入している人(企業年金のあるなしにかかわらない)で、インターネットや店舗の窓口で手続きが行えます。

個人型確定拠出年金を始めてみようと思ったら、まずは運営管理機関を選びます。

個人型確定拠出年金を取り扱っている運営管理機関は、銀行、証券会社、保険会社などがあり、どこの運営管理機関で契約して口座を開設するかで運用する商品の品揃えや商品の購入・保有・解約時の手数料、口座管理手数料が異なってくるのでしっかり考えてください。

運営管理機関を賢く選ぶ時は、

  • 運営管理機関へ支払う運営管理手数料が少ない
  • 預金、保険、投資信託のラインナップが充実している
  • 投資信託の販売手数料(購入する時に支払う手数料)、信託報酬(保有している間ずっと支払う手数料)、信託財産留保額(解約する時に支払う手数料)が安い

という条件を満たしている会社を選ぶのがいいです。

では、加入時と運営時にどのくらいの手数料を支払わないといけないのかというと次の通りです。

加入時に支払う手数料
  • 国民年金基金連合会:2777円
    ※加入する時に1回のみ支払います。
運用時に支払う手数料
  • 国民年金基金連合会:月々103円、年間1236円
  • 事務委託先金融機関:月々64円、年間768円
  • 運営管理機関:月々0~500円、年間0~6000円

加入時の手数料を除けば1年間で1236円+768円+4000円=6004円支払うことになります。
※運営管理機関へ払う手数料(口座管理手数料)は金融機関で異なりますが年間4000円くらいが多いです。手数料が安く商品が豊富なSBI証券、楽天証券、スルガ銀行がおすすめです。

運営時に運営管理機関に支払う手数料が高額な金融機関もあるので適当に契約するのではなく、インターネットから資料請求するか店舗の窓口に行って詳しい説明を聞いて、金融商品の充実度、手数料などを複数の運営管理機関で比較検討してください。

個人型確定拠出年金の運用方法

個人型確定拠出年金を運用する時は、定期預金、年金保険、投資信託(国内債券、国内株式、外国債券、外国株式)という商品に掛け金を振り分けて運用します。
※投資信託とは、ファンドマネージャーという投資のプロが投資家に代わって株式や債券を組み入れて運用してくれる金融商品のことです。

個人型確定拠出年金で運用できる金融商品を2つに分けると元本確保型と元本変動型に分けられます。

元本確保型
元本確保型とは、定期預金と年金保険などのことです。商品自体には価格の変動はないので満期になったら元本+利息が受け取れる商品ですが、金利が低いので資産を大きく増やすことは期待できません。
元本変動型
元本変動型とは、金融商品の価格が変動し収益が増えたり減ったりする投資信託のことです。投資信託の価格は経済情勢や企業業績で日々変動しているので、保有している資産価格を大きく増やすこともできます。
※投資している以上仕方ありませんが運が悪いと元本割れすることもあります。

どちらの商品で運用すればいいかは、将来受け取る年金額を大きく増やしたいかどうかで変わります。年金額を大きく増やしたいなら資産を大きく増やさないといけないので元本が変動する投資信託で運用することになります。

投資信託で値動きが大きい商品から並べると、外国株式型、国内株式型、外国債券型、国内債券型という順番になります。
※投資先に相応しいかどうかは、目論見書で投資信託の概要、運用レポートで過去の実績を確認して判断しましょう。

投資信託は価格は変動しているので上手に投資すれば資産を大きく増やすことが可能です。購入する際は販売手数料が少ないもの、商品を保有している間の信託報酬率が少ないもの、売却した時の信託財産留保額が少ないものを選ぶと手数料的にはお得です。

個人型確定拠出年金は節税面では恩恵を受けますが、将来受け取る年金が増えるか減るかはその人の運用成績次第なのでわかりません。もし減ってしまっても自己責任として片づけられるので気をつけましょう。

途中で掛け金(拠出額)を変更したい時は、月々68000円、23000円、12000円という上限の範囲内で行うことができます。

また、定期的に配分変更やスイッチングを行えば、掛け金を有効に投資することもできます。

  • 配分変更:毎月の掛け金で購入する商品の割合を変更したり購入する商品を新たに増やしたり減らしたりすること。
  • スイッチング:今まで積み立ててきた資産の一部やすべてを売却して、その売却した資金で商品を新たに購入して入れ換えること。

どちらにしても、上手に運用するにはほったらかしにはせずに定期的なメンテナンスが必要になることを覚えておきましょう。

個人型確定拠出年金の受け取り方法

公的年金の国民年金は65歳から、厚生年金は60歳から受給開始となりますよね。
※国民年金は受給開始年齢を早めることはできますが、受給を早くすると受給額が減額されます。

では、個人型確定拠出年金は何歳から受給開始になるかというと60歳からです。
※60歳から受け取るには10年以上の加入期間が必要です。10年に満たない時は次の表のように受給開始年齢を先延ばしされます。60以降は掛け金の拠出はできませんが今まで通り運用のメンテナンスは行えます。

個人型確定拠出年金の受給開始年齢の表
通算加入期間受給開始年齢
10年以上60歳
8年以上10年未満61歳
6年以上8年未満62歳
4年以上6年未満63歳
2年以上4年未満64歳
1カ月以上2年未満65歳

運用してきた積み立て金の受け取り方法は3通りあり、どちらの受け取り方でも税金の控除の対象となります。

  • 全額を一時金として受け取る:退職所得控除が適用されます。
  • 年金として分割し少しずつ受け取る:公的年金等控除が適用されます。
  • 一時金と年金を併用して受け取る:退職所得控除と公的年金等控除が適用されます。

※積立金を受け取る時は、受給1回につき給付手数料として432円かかります。年金として分割して受け取る場合は、すべての受け取りが終わるまでは毎月口座管理手数料が発生します。

このように、個人型確定拠出年金は、定期預金のように短期的に貯めて引き出すものではありません。60歳になるまで積立金は引き出せないので、車を買う、家を買うという各イベントのことを考えて掛け金を決めてください。

(記事作成日:2017年6月7日、最終更新日:2017‎年6‎月8‎日)

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