温泉法に定められている温泉の定義
どのようなお湯が温泉って名乗れるの?
日本人にとって温泉とは、日頃のストレスを発散する癒しの場所として欠かすことができない存在ですよね。
温泉の役割は、日頃のストレスが溜まる生活から気分転換する為に自然の中に足を運び温泉に入浴して身体を癒してリフレッシュすることですし、温泉地に長期滞在して特定の病気を治療する湯治(とうじ)を目的とすることなど様々あります。
ゴールデンウィークや夏休みなどの長期連休になれば家族で自然の風情が素晴らしい温泉地に行く、土日になれば露天風呂に出かけ快適な湯加減の温泉に入浴して身体を癒し、冷え症や疲労の回復をさせている方は大勢いると思いますが、温泉は身体に良いお湯くらいの知識しか持っていないことが現状ではないでしょうか。
日本の温泉は、1948年(昭和23年)に公布された温泉法という法律によって温泉に関する様々なことが定義されています。
温泉法の定義によると、温泉に含まれる化学成分や浴槽の中の湯温は関係なく、源泉の湧き出し口での地下水の温度が摂氏25℃以上であれば温泉とされています。
※25℃未満の地下水は鉱泉となります。
ですから、温泉法では、山の中でも海岸の近くでも地下から採取する地下水の温度が25℃以上あれば温泉になります。
湧出口で25℃未満の地下水は温泉ではないの?
湧出口で25℃以上ある地下水は温泉と名乗ることができますよね。
では、25℃未満の地下水はどのように分類されるのかというと、25℃未満の地下水は鉱泉に分類されますが温泉に分類できないわけではありません。25℃未満では下記の表で示す18種類の溶存成分の含有量のうち1種類でも条件を満たしていれば温泉になります。
また、18種類の溶存成分が規定値未満でも溶存成分の総量が規定値以上であれば温泉になりますので、源泉の温度で温泉の条件が満たされない場合は、18種類の溶存成分の含有量又は溶存成分の総量のどれか1種類でも規定値を超えていればいいのです。
このように、地下水の温度と地下水に溶け込んでいる物質の含有量によって温泉になり、地下水に含まれている各種化学成分の違いにより身体への健康効果が変わるので、温泉地に足を運ぶ時は温泉に含まれる成分を確かめてから訪れるようにしましょう。
物質名 | 温泉1kg当たりの物質の含有量 |
---|---|
溶存物質(ガス性のものを除く) | 総量1000mg以上 |
遊離炭酸(CO2) | 250mg以上 |
リチウムイオン(Li+) | 1mg以上 |
ストロンチウムイオン(Sr2+) | 10mg以上 |
バリウムイオン(Ba2+) | 5mg以上 |
フェロイオン(Fe2+、Fe3+) | 10mg以上 |
第1マンガンイオン(Mn2+) | 10mg以上 |
水素イオン(H+) | 1mg以上 |
臭素イオン(Br-) | 5mg以上 |
沃素イオン(I-) | 1mg以上 |
フッ素イオン(F-) | 2mg以上 |
ヒドロひ酸イオン(HAsO42-) | 1.3mg以上 |
メタ亜ひ酸(HAsO2) | 1mg以上 |
総硫黄(S)[HS-+S2O32-+H2Sに対応するもの] | 1mg以上 |
メタほう酸(HBO2) | 5mg以上 |
メタけい酸(H2SiO3) | 50mg以上 |
重炭酸ソーダ(NaHCO3) | 340mg以上 |
ラドン(Rn) | 20(100億分の1キュリー単位)以上 |
ラジウム塩(Raとして) | 1億分の1mg以上 |
※温泉として認められる為には、上記に示すいずれかの物質が1つ以上地下水1kgに対して規定量以上溶け込んでいなければいけません。
温泉の源泉が湧き出す場所はどこ?
温泉が地下から湧き出す場所の種類としては、火山性の温泉と非火山性の温泉に区別できます。
火山性の温泉の特徴は、火山活動に伴うマグマが熱源となり地中の温度が上昇して地下水の温度も上昇して地表に湧き出てきます。
非火山性の温泉の特徴は、火山活動によるマグマなどの熱源で地下水が温められるのではなく、地表から100m深くなるごとに温度が約3℃高くなるという地温勾配が熱源となります。
したがって、非火山性の温泉では地球の中心のコアから放出される熱が熱源となり、地面を1000m掘削すると約30℃に温められた地下水が湧き出る計算ができます。
温泉法の定義では地表に湧き出てくる地下水の湯温が25℃以上であれば温泉とみなされるので、ボーリングで1000m程度穴を掘って人為的に温泉を湧き出させることも可能です。
温泉には、岩石の割れ目や断層などを通って自然に湧き出てくる温泉とボーリングで掘削して人為的に湧き出させた温泉の2種類がありますが、どちらの温泉でも長い時間をかけて地下で鉱物を含む水となり熱源に温められた後に地上に姿を見せた地下水です。
※温泉が沸き出している場所は、地下に地下水と熱源、又は温泉と定義される成分が揃っている場所です。
最近は源泉の枯渇を防ぐ為に循環装置を設置して湧き出た温泉水を雑菌が繁殖しないように塩素消毒をして循環させたり、湯温が高い温泉は水道水を加水して丁度良い温度にする為に源泉を薄めたり、泉質や成分を温泉らしくする為に入浴剤を入れたりしている温泉施設がありますよね。
温泉水の循環ろ過の有り無し、消毒の有り無し、加水の有り無し、加温の有り無し、入浴剤利用の有り無しは脱衣所などに掲げることを義務付けられているので温泉分析表のパネルを見ればわかりますが、せっかく長時間かけて温泉地までアクセスしたのに消毒・循環・加水・加温され入浴剤入りの温泉に入浴していては温泉に入りに来ている意味があるのか疑問に思いませんか。
本当の天然温泉に入りたいのなら、循環・消毒・加水・加温・入浴剤投入をしていない100%源泉掛け流しの温泉に行くことをおすすめします。
なお、温泉は自然の地下資源なので、浴槽で使用する湯量が多く過剰にくみ上げると温泉の湧出量が減少し枯渇する恐れがありますし、地震や火山活動が原因で地殻変動が起こり泉質が変わったり枯渇することがあるので、100%源泉掛け流しの温泉施設は数少ないです。
(記事作成日:2017年10月16日、最終更新日:2017年10月17日)